トランプ政権の再登場と高市政権の誕生は、暗号資産を「規制対象」から「国家戦略の一部」へと位置づけ直す大きな転換点となりつつある。米国ではSEC(米国証券取引委員会)主導の締め付け一辺倒から、産業競争力を意識したルール形成への転換が進み、日本でもWeb3、ステーブルコイン、トークン化を成長戦略に組み込む動きが加速している。
N.Avenue clubは国内外のゲスト講師を招いた月1回の「ラウンドテーブル(研究会)」を軸に、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」などを通して、日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指している。
2026年1月のラウンドテーブルでは、暗号資産ビジネスのグローバル展開を見据えたポジショニングや投資判断の視点について掘り下げるべく、日米のデジタル資産規制をテーマに採用。日本については、弁護士や取引所の日本法人代表らが登壇し、昨年12月に公表された金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告」の詳細や、暗号資産取引業者が予想される影響についてプレゼンした。また米国の現状については、ステーブルコイン・USDCを発行するサークルのアジアパシフィックVPがオンラインで登壇、ジーニアス法案の内容や、同社の取り組みの現状などについて説明した。
ラウンドテーブルは会員限定のイベントのため、その一部を以下にレポートする。
冒頭のブリーフィングセッションでは、USDCを発行するサークルで、アジアパシフィックの戦略とパブリックポリシーVPを務めるDavid A. Katz(デイビッド・カッツ)氏がシンガポールからオンラインでプレゼンテーションを行った。
同社が手がけるUSDCは、米国の規制に準拠し、グローバルで金融機関なども取り引きするドル建てステーブルコインのひとつのスタンダードとなっている。2025年3月には、日本でも取り扱いが始まったことはご承知のとおりだ。
河合弁護士:12月に公表された金融審議会・暗号資産WG報告を解説
ブリーフィングセッションの後は、会場でメインセッションが行われた。最初に登壇したのは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業のパートナー、河合健弁護士で、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告」について解説した。
河合氏は、暗号資産の実態が「決済」ではなく「投資」寄りだという認識が共有されている中で、「20%分離課税」という業界の悲願が全面に出た形だと説明。分離課税への変更は国のお墨付きを与える形といえるため、規制の強化がセットになっているとした。ただ、規制は有価証券のそれと同じではなく、主要3本柱(情報提供/業規制/不公正取引)を中心に強化されるという。
プレゼン後のQ&Aセッションで、金商法への移行について評価を問われた河合氏は、「なかなか厳しい着地」との感想を述べたうえで、結果として交換業者は“金融機関的”な重い役割を担う方向になるとしながら、一方、既存金融機関には参入チャンスにもなると述べた。
バイナンスジャパン・千野代表:議論すべき論点を指摘
次に登壇したのは、バイナンスジャパンの代表・千野剛司氏。千野氏は、金商法移行により想定される暗号資産交換業者への影響を説明。投資家保護・セキュリティ向上には賛成だが、規制の水準とタイミングを誤ると事業者負担が過重になるとの懸念を述べていた。
特に重要な論点として、責任準備金について触れ、制度の趣旨は理解するとしながら、設計次第で市場構造が変わるとの考えを述べた。尽くすべき議論も、「金額」「積み立て手段」(円かクリプトか)「会計処理」「優先弁済権の扱い」「BSに入れたときの取り出し難さ」など、多岐に渡るとした上で、「預かり資産に連動して積み立てることになっているのは、主要国では英国くらいだ」などと指摘した。
Q&Aセッションでは、期待が高まっているETFについて回答。ETFが誕生すれば、裁定取引が活発化するなど、現物市場にも流動性向上という恩恵があると述べた。
メルコイン・藤井氏:責任準備金は小規模事業者に致命的なものにも
メインセッションで最後に登壇したのは、メルコインのDirector of Fintech Business Legal & Governanceを務める藤井豪氏。メルコインの強みはメルカリアプリ内で完結するシームレスな設計で、BTC売却→支払いという「BTCで買い物する体験」を提供。取り扱い暗号資産をBTC/ETH/XRPの3銘柄に絞り、セキュリティとコスト管理を両立しているという。
金商法移行に関しては、ライセンス再取得や体制整備コストが重く、適合性判断・説明義務の厳格化でUX低下を懸念しているとしたほか、インサイダー規制への対応でモニタリング投資が増えるとの見立てを述べた。負担の中でも責任準備金は小規模事業者に致命的なものにもなり、当局には軽減を求めたいとの考えも明らかにした。
デジタル資産サービスの“あるべき姿“と、法律の壁
ラウンドテーブルの後半は、参加者全員がいくつかのテーブルに分かれディスカッション。テーマは「Web3・デジタル資産サービスの“あるべき姿“と、法律の壁とは?」で、メインセッションで登壇した河合、千野、藤井の3氏も議論に参加した。
ディスカッション後、感想を求められた登壇者らは、「日本では何か問題があると急いで(法律などの仕組みを)整備をするが、後からいろいろなプロダクトが出てきてうまくはまらないことがあるので、まずはプリンシプルベースでやらせて問題が出てきたら対応する、というアプローチのほうが良いのではないか」「ステーブルコインが出てこないのは、本当に法律の壁が理由なのか?という話があり、一番のハードルは金融機関のコンプライアンス部門などがコンサバティブすぎるからではないか」などと述べていた。
N.Avenue club事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンへの参加を呼び掛けている。
|文:瑞澤 圭
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:多田圭佑
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