●機関投資家は投機ではなく、ステーキング中心にETHを中長期で積み増している。
●ネットワーク利用は拡大しているが、価格と評価はまだ追随していない。
●MVRVは中立水準にあり、強気トレンドを断定できる段階ではない。
大手機関投資家は、価格が明確に動き出す前から、静かにETHへのエクスポージャーを積み上げている。米国では、トム・リー率いるBitMineが1日で82,560 ETH(約2.6億ドル相当)をステーキングし、わずか1週間でステーキング総額は約17億ドル規模に達した。これは短期的な値動きを狙った投機というより、ネットワーク参加を前提とした中長期のポジション構築と解釈できる。
同時に、Ethereumのトランザクション数は過去最高水準を更新している。この増加は、純粋な投機取引というより、Layer2を含む実利用の積み上がりによるものと見られる。ネットワーク活動は価格に先行して進展しており、利用面ではすでに一段成熟したフェーズに入っている一方、評価はまだ追いついていない状況だ。
プロトコル設計の観点でも、Ethereumは短期的な収益最大化より、長期的なエコシステム成長を優先している。2025年には1億ドル超の確実な手数料収益をあえて放棄した。Dencunアップグレード以降、Layer2がメインネットに支払った手数料は約1,000万ドルにとどまる一方、Layer2側には約1.19億ドルの収益が残っており、スケーラビリティと開発者インセンティブを重視する構造が強化されている。
一方で、評価面のシグナルは依然として抑制的だ。ETHのMVRVは、過去の強気相場で見られた水準を大きく下回っているだけでなく、過去の割安局面と比べても高い水準にはない。グラフが示す通り、MVRVは極端な低水準や過熱圏ではなく、長期的な中立ゾーン付近で推移している。これは、大きな下落圧力が限定的である可能性を示す一方、市場全体に含み益が広がる強気局面に入ったとはまだ言えないことを意味する。
現時点でのベースシナリオは、ファンダメンタルズの改善に支えられた構造的な調整・持ち合いであり、明確な上昇トレンドの確認には至っていない。
ただし、MVRVが急上昇する、あるいはレバレッジ主導の投機が再び拡大する場合には、この見方を見直す必要がある。
オンチェーン指標の見方
ETHのMVRVとRealized Priceは、現在の価格が市場参加者の平均取得コストと比べてどの位置にあるかを示す指標である。Realized Priceは保有者の平均コストに近い水準を表し、MVRVは現在価格をそれで割った比率となる。
MVRVが1付近では損益が拮抗し、相場は調整やレンジになりやすい。高水準では過熱、低水準では売り圧力が一巡しやすい傾向があるが、いずれも価格転換を直接示すものではない。この指標は将来の価格予測ではなく、相場フェーズを把握するためのもの。ETHが割高か割安かではなく、市場の現在地を冷静に測るために使うのが適切である。
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