決済インフラはどこへ向かうのか。
2025年12月15日、Visaのグループプレジデント、Oliver Jenkyn(オリバー・ジェンキン)氏は「From AI Shopping to Strides in Stablecoin: Top Payments Predictions For 2026(AIショッピングからステーブルコインの進展まで:2026年を変革する決済に関する主な予測)」を公表。AI、ステーブルコイン、オンチェーン技術が、決済インフラの前提条件そのものを書き換え始めているとの見方を示した。
Visaが描いているのは、派手な「決済革命」ではない。決済がユーザーの意識から消え、購入体験の裏側に組み込まれていく世界だ。その過程で、清算レイヤーは静かに再設計され、オンチェーン技術は既存金融を補完するインフラとして組み込まれ始めている。JPYCやUSDCをめぐる日本での動きも、その兆しのひとつだ。
決済インフラの主戦場がどこへ移りつつあるのか、Visaの2026年予測を手がかりに、その輪郭を整理する。
AIが購買と決済を“代理”する時代
ジェンキン氏が最初に挙げるのは、AIによるコマース体験の変化だ。
生成AIは、検索やレコメンドにとどまらず、ユーザーに代わって商品を選び、条件を比較し、決済までを自動化する存在になりつつある。AIが主体となる取引では、「どのカードを使うか」「どの決済手段を選ぶか」といった判断は前面に現れない。
その結果、決済に求められる価値も変わる。重要なのはUIのわかりやすさではなく、信頼性、即時性、グローバル対応、例外処理への耐性だ。Visaは、こうしたAI主導の取引環境においても、自社ネットワークが「信頼のレイヤー」として機能し続けることを前提に、決済インフラの再設計を進めている。
ステーブルコインは「実験」を終え、決済レイヤーへ
Visaの予測でもうひとつの柱となるのが、ステーブルコインの位置づけの変化だ。
ステーブルコインはもはや暗号資産取引に使われるだけのものではない。Visaはステーブルコインを「24時間365日稼働する清算インフラ」と捉えている。
オンチェーンで即時に価値を移転できるステーブルコインは、従来の銀行間決済や国際送金が抱えてきた時間的・地理的制約を解消しつつある。Visa自身も米国でCircle(サークル)が発行するステーブルコイン「USDC」を用いた清算を開始している。ステーブルコインがカード決済ネットワークの中枢に組み込まれ始めたことは象徴的だ。
これは、ステーブルコインが「周辺的な実験」から「既存決済インフラと接続する実装フェーズ」に入ったことを示している。
オンチェーンは既存金融と「対立」しない
興味深いのは、Visaがブロックチェーンを既存金融インフラをリプレースするものとして位置づけていない点だ。
オンチェーン技術は、銀行やカードネットワークなどの既存システムと対立するものではなく、既存システムを補完し、効率化するための新たなレイヤーとして語られている。
規制遵守や消費者保護を前提に、スケールと信頼を確保した形でオンチェーン技術を取り込んでいく。この姿勢は、ステーブルコインや資産のトークン化に象徴される「オンチェーン金融」がメインストリームの決済・清算インフラに組み込まれていく未来像と重なる。
日本市場でも始まった「実装」
こうしたグローバルな変化は、日本市場でも具体的な動きを見せ始めている。
すでに、円建てステーブルコイン「JPYC」を支払いに利用できるカードが登場しているほか、USDCを支払いに使えるカードも事前登録が始まっている。さらに、USDCを店舗決済に利用する実証実験も春に開始される予定だ。
一方で、銀行預金を裏付けとするトークン化預金「DCJPY」を、証券決済やB2B決済に活用するための実証実験も進められている。
これらの取り組みは、オンチェーン上の価値を、既存の決済体験に違和感なく接続しようとする試みだ。さらには3メガバンクが共同でステーブルコインの発行に向けた取り組みを進めているほか、SBIもスターテイルと円建てステーブルコインの共同開発を発表するなど、ステーブルコイン、トークン化預金を取り巻く動きが活発化している。
「支払い」は消え、インフラが主役になる
Visaの2026年予測を貫くキーワードは、いわば「決済の不可視化」だ。
AIが判断し、ステーブルコインが清算し、オンチェーン技術が効率を高める。その結果、ユーザーは「どう支払っているか」を意識しなくなる。
決済はユーザー体験の前面から退く。しかし、その裏側で動くインフラの重要性は、これまで以上に高まる。Visaが描く未来は、決済のディスラプションではなく、決済がユビキタスなインフラとして組み込まれ、国境やシステムの違いを意識せずに価値が移転できる世界だ。日本市場でも、その兆しはすでに見え始めている。
|文:NADA NEWS編集部
|画像:Visaのウェブサイト(キャプチャ)

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